黄ぶな

■黄鮒[きぶな]

▽解説

 栃木県宇都宮市の郷土玩具「黄鮒(きぶな、黄ぶな)」は、黄色い魚の形をした張り子の縁起物です。
 
 昔、宇都宮に天然痘が流行した際に黄色あるいは金色の大きな鮒が田川で獲れ、これを病人に食べさせたところ薬効があったという伝説が由来とされており、この鮒を象った張り子を悪病除けのまじないとして、正月や節分に門戸などに吊り下げたものであるといわれています。

 毎年正月には黄鮒や同じく縁起物である豆太鼓が宇都宮二荒山神社の社前や初市で販売されてきました。
 江戸時代から伝わるといわれ、戦前頃までの黄鮒は全体が黄色に彩られ、墨で簡素な尾鰭などを描いたものだったようですが、現在では頭は赤、鰭は黒、尾は緑に塗り分けられています。


 2020年の新型コロナウィルス感染症流行に関連し、宇都宮では「疫病退散」のシンボルとして黄鮒にも注目が集まったことが地元紙などで報道されました。
 12月には市内の馬場通りに黄鮒の張り子を作る際の木型を御神体とする「黄ぶな大明神」の社が期間限定で設置されました。これは例年開催されていた「宮の市」が中止となったために代替行事として企画されたもので、黄ぶな大明神に無病息災と商売繁盛と祈願して誘客につなげたいという願いがこめられているとのことです。