■咳病の鬼[がいびょう‐き]
▽解説
『絵本小夜時雨』には「翁疫神を防」という題の話が収録されています。その内容は以下の通り。
永正(1504~1521)の頃、越前国の四、五ヶ村に咳病(がいびょう。咳の出る病)が流行し、多くの村人が病床に臥せる事態となりました。
病に襲われた村には浪士が住んでいましたが、不思議なことに彼の家では一人も咳病にかかる者が出ていませんでした。
ある夜、この浪士のもとに老人が訪ねてきてこう言いました。
「私はこの家の辰巳隅に住む者だ。このところ咳病の鬼が家々に入り、人を悩ませている。私はそなたの徳行を感じて、夜々門前に佇んで鬼を防いでいるのだ」
老人が去った後に辰巳(東南)の方角を掘ってみたところ、土中から一つの箱が出てきました。浪士はこれこそ家を守ってくれた翁であろうと考え、社を建てて祀ったといいます。
絵には雲に乗って浪士宅への侵入を試みる三匹の小さな鬼と、門前で睨みを効かせてそれを阻む老翁の姿が描かれています。
▽註
・『絵本小夜時雨』…絵本読本。速水春暁斎画作。寛政12年(1800)刊。数々の怪談、奇談を収める。
コメント
コメント一覧 (2)
箱の中身がなんなのかとか、ありがたいけど
何かモヤモヤする…
なんか家の近くに埋まってたけど無条件で家を守ってくれる存在ではなさそうなのも一癖ありますね。
行いが良ければ神様めいたお方が病を退けてくれるというのは、本当ならどれほど良いだろうとは思うのですが