筬火

■筬火[おさび]

▽解説

 宮崎県延岡地方に伝わる怪火の一種で、三角池という池に出るといわれています。

 これは雨の降る晩に二つ出るもので、明治の半ばまでは折々目撃者がいたといいます。
 昔、二人の女が筬(おさ。機織の際に折り目を整えるために使う櫛状の器具)の貸借をめぐって、返せ、返したの争いとなって池に落ちて死んだといい、そのため二つの火が現れて喧嘩をするようになったのだと考えられていました。

 筬火の名は『延岡雑談』を出典として柳田國男「妖怪名彙」(『妖怪談義』所収)にて紹介されています。
 ここでは類似する妖怪として名古屋の「勘太郎火」の名も挙げられています。