宇津ノ谷峠の鬼

■宇津ノ谷峠の鬼[うつのやとうげ‐おに]

▽解説

 静岡県静岡市と藤枝市の境にある宇津ノ谷峠を舞台とする伝説に登場するものです。
 

 宇津ノ谷峠北側の谷の下に梅林院という寺がありました。
 この寺の住職は病に罹っており、身体には腫物を生じて耐え難い痛みに襲われていました。血膿を除くと痛みが和らぐので、時として小僧にその血膿を吸い出してもらっていました。このために人の血の味を覚えた小僧は、宇津ノ谷峠に潜んで往来の人を取って食う鬼となり果ててしまいました。
 鬼を恐れて峠を行き交う人は絶え、街道は次第に寂れていきました。
 
 時は過ぎ、東国へ赴く在原業平が峠にさしかかった際、鬼の害に悩む村人の救済を地蔵菩薩に祈願しました。
 すると、地蔵菩薩が旅の僧に化身して峠に現れました。
 鬼は童子に化けて旅僧を迎えますが、すぐにその正体を看破されるや身長二丈あまりの恐ろしい姿をあらわしました。
 僧は観念したと見せかけ、最期に鬼の神通力をもっと見せてくれと頼みます。得意になった鬼はさまざまに姿を変えてみせ、「わしの掌に乗るほど小さくもなれるか」という僧の問いに応じて、小さな丸い玉となって僧の掌に乗りました。
 すかさず僧は手にした杖で玉を打ち据えました。大音響と共に玉は十個に砕け、僧は鬼を迷いから救ってやると約束してそれらを一口に呑み込んでしまいました。

 以後、鬼は現れなくなり、人々は地蔵菩薩の教えによって、鬼の供養のために砕けた玉を模した十粒の小さな団子を作るようになりました。
 
 古くから宇津ノ谷名物として売られていた「十団子」は小さな団子十粒を糸で数珠のように繋げて束ねたもので、この鬼退治の逸話が由来なのだといわれています。
 現在も宇津ノ谷の慶龍寺では縁日のときに厄除けの十団子が作られています。




 食べ物の由来にしてはなかなかエグい導入なんですけども、人を食ってきた鬼が人に食べられるものに姿を変えたってことですっきり収拾がついた気分です。
 たとえば青頭巾はお稚児さんの死がきっかけで住職が鬼になる話でしたが、こっちの住職は小僧さんを鬼にしてしまうのでどっちもなんだか業が深いですね~