ゴリラ婿

■ゴリラ婿[‐むこ]

▽解説

 「南島昔話叢書」の一冊『国頭村の昔話』(平成2年刊)には、沖縄県国頭郡国頭村で採集された「ゴリラ婿入」という昔話が収録されています。
 語り手は明治24年生まれの女性で、話の内容は同じ沖縄の儀間で採集された「ゴリラ女房」に類似したものとなっています。


 南洋から来た人に聞いた話だといいます。
 ある船が遭難してどこか南方の島に流れ着き、乗っていた者のうち一人の女だけが生き残って陸地の洞穴で暮らしていました。
 そこにゴリラ(「猿ぬ大ぎーや」とも表現されています)がやって来て、彼女との間に男の子をもうけました。
 
 女はゴリラとの間に生まれた子を抱いて、船が通るたび「どうすれば逃げることができるだろう」と考えを巡らせていました。
 あるとき船が島に来たので子供を連れて乗りこもうとしたところ、追いかけてきたゴリラが彼女から子を奪い取りました。ゴリラは子の股ぐらを掴んで「引っ裂きーんどー(引き裂くぞ)」と脅して女を船から降ろそうとしますが、女は船に乗ったまま逃げていきました。
 ゴリラは怒り、棲み処へと戻っていきました。

 ゴリラの息子は言葉もわからないまま、食べ物も箸や匙など用いず手で直接食べて成長していきました。
 しかし時を経て別の島に上陸すると、そこで言葉や食事の仕方を学び、妻も娶って子供が生まれました。
 やがて彼は自分が生まれた場所を再び訪れました。
 その洞窟(ガマ)の中では、父であるゴリラが死んでいました。
 母親の行方はわからないままでしたが、父の骨は供養されたということです。


 肉親である獣が故郷に取り残され、そこで骸や白骨になっているという結末は沖縄に伝わる「熊女房」の話とも共通しています。
 ゴリラ婿入の話はゴリラ女房から派生した話のようにも思われますが、両者がどのような関係にあったかは今のところ不明です。


▽関連

ゴリラ女房


 
 これも氷厘亭氷泉さんに教えてもらったゴリラです。すごい。案外あるのかゴリラ異類婚! 奥が深いぞゴリラ話。
 「女房」が衝撃的なラストだったのであとから婿入の話を読むと中盤でもうハラハラが止まらないのです。いや、無事でよかった……。
 そしてゴリラ話にはまだ他にも注目すべきものがあって、驚異に満ちロマンあふれる世界だなぁ~と思っているわけですが、それはまた次の機会に。