■陰摩羅鬼[おんもらけ]
▽解説
『駿国雑志』巻二十四下で紹介されているものです。
これは駿河国安倍郡安倍川原の渡頭、刑場に現れるものだといいます。
里人が語るところによれば、陰雨寂寞たる夜、安倍川の仕置場に奇火を見た者がいたといい、その色は青く、人が佇んでいるような形をしていました。
この他、古戦場や墳墓のあった場所にもこの火が現れることがあるといいます。
名付けて幽霊火というもので、これは土中に凝って長い間消滅しなかった人血がなす陰火で、世にいう陰摩羅鬼(おんもらけ)であろうと記されています。
陰摩羅鬼(おんもらき)は林羅山『怪談全書』などで紹介されている屍の気が変じたという妖怪で、黒い鳥の姿をしているとされます。
『駿国雑志』で陰摩羅鬼とされているものは鳥ではなく陰火ですが、死体から出たものの変化という部分に共通点を見出すことができます。
▽註
・『駿国雑志』…阿部正信著。天保14(1843)年成立。駿河国の地誌で、巻二十四に「怪異」の記述がある。
▽関連
・陰摩羅鬼(おんもらき)
けっこう形態ちがうし、名前にも「おんもらけ」って読み仮名ついてるしで、前回の陰摩羅鬼と一項目にまとめてしまうのはなんだかもったいなく思われたので紹介してみました。
コメント
コメント一覧 (2)
魂の表現としては両方ともメジャーな形と言えますね
しかし人型を象った鬼火というのは珍しい
死んだ人間の血が蒼い炎を上げて燃えるという背景も神秘的です
とにかく「寒色の炎」「顔の無い人型」というビジュアルが無条件に好きなので
今回のイラストもかなりツボです。特に外と内の中間層にあたる炎が
薄緑色なのが不思議なグラデーションになっていて素晴らしい
小さいアイコンだと青白い人影がぼうっと
浮かび上がっているように見えるのもいいですね
イメージが近いものを取り込んでその概念がカバーする領域が広くなるのは少し前に紹介した魍魎とも重なりますね。
火の妖怪は描き分けに苦慮するものたちのひとつなんですが、この幽霊火の陰摩羅鬼はかなり特徴あるので助かりましたね……そしてツボを突けてよかったです
遠目に見ると磔にされたような人影が浮かんでる、みたいな感じで描いてみたかったのですよ