鯖の生き腐り

■鯖の生き腐り[さば‐い‐ぐさ‐]

▽解説

 鯖は水から揚げるとすぐに死んでしまい、内臓に含まれる酵素の働きにために傷みやすく、新鮮なように見えても食中毒を起こしやすいことから、俗に「鯖の生き腐り(生き腐れ)」といわれました。

 滑稽本『諺臍の宿替』にはこの言葉を元にした「鯖のいきぐさり」の図があります。
 頭は魚で体は人、三本の足をもつ鯖は、走りながら次のようにぼやいています。
 「ああしんど。なんでも俺は足が早いよって、一時もはよ大坂へ行け言われて、ゆうべからこの通り足三本で走ってきたが、間に合うたかしらん。あんまり走ったのではらわたがひっくり返って、さっぱり腐ってしもた。おっとどっこい、こんな顔を見られては誰も使うてくれやせん。なんでも勢い見せんと、どむならん。ハイハイ、さばやよろしゅう」

 食物が腐りやすいことを意味する「足が早い」にかけて、この鯖には速く走れるような三本の足が生えています。それでも大坂に辿りつく前に生きながらにして腸から腐りはじめてしまったようです。


▽註

・『諺臍の宿替』…幕末から明治頃に上方から流布した戯文集。書名や体裁を変えつつ繰り返し出版された。一荷堂半水作、歌川芳梅画。諺や慣用句、人の性質を表す言葉などを文字のままとらえ、滑稽な絵と文で表現している。