見しょう見しょう

■見しょう見しょう[み‐み‐]

▽解説

 『新説百物語』巻之一「見せふ見せふといふ化物の事」は女の首の化物が登場する怪談で、以下のような内容となっています。

 
 京都の醒ヶ井通に書物屋の利助という者がおり、京大坂で書物を仕入れ、奈良まで通ってそれらを売っていました。
 ある年の霜月(十一月)初旬、病気が癒えて久々に一人で奈良へ向かうことにした利助でしたが、用事で出立が遅れたために道中で日暮れを迎えてしまいました。
 やがて奈良街道の人里離れた三昧場(墓地)のあたりを通りかかった利助は、野辺を吹く風が身にしみて、星も見えない夜道の一人歩きを心細く感じていました。
 その時、ふと一町ばかり先に視線を投じると、狐火でも提灯の火でもないような火が点り、ふらふらとこちらへやって来るのが見えました。
 火が近づいてくるのにしたがって、何やら女が泣くような声も聞こえてきます。
 利助は路傍の大石塔の陰に身を隠して様子を窺いました。
 やがて見えてきたのは、鉄漿を黒々とつけ、髪を振り乱した女の首でした。首だけが地上一尺ほどの高さを風が吹くように飛び、もの悲しい声で「見しょう見しょう」とだけ言って通り過ぎていきました。女の首が声を発するたびに、口からはかっかっと火が出ていました。
 利助は首が四、五間ほど先へ行くまでは様子を見守っていましたが、それからは目を回して前後不覚となり、夜明け前にようやく正気に戻りました。
 急いで奈良へ赴き、宿の主人にこのことを語ったとき、利助はいまだに身震いしていたといいます。 
 

▽註

・『新説百物語』…高古堂作の怪談集。明和四年(1767)刊、全52話を収録。



 
 なんか灯りが近づいてくると思ったらお歯黒の女のひとの首が飛んでくるなんてこわすぎる……どうも事情があるようですけども、言ってることもよくわからなくてとても不気味です。