姦姦蛇螺

■姦姦蛇螺[かんかんだら]

▽解説

 インターネット上で広まった怪談のひとつに登場する妖怪で、朝里樹著『日本現代怪異事典』によれば、初出は2009年3月にウェブサイト『ホラーテラー』に投稿されたものであるといいます。現在では、インターネット掲示板『2ちゃんねる』オカルト板のスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?(洒落怖)」で紹介され、そこからの転載を介して広まっているようです。

 
 物語中、主人公(語り手)である少年たちは、田舎の森の立入禁止となっている区域を訪れ、そこで呪術的な意味を持つらしい物体に触れ、封印が解けて出現したと思われる怪物に遭遇します。その結果少年の一人は両手足に激痛を発して錯乱状態となり、「あおいかんじょ(葵)」と称される巫女が事態の収拾に乗り出すという展開となっています。
 後半、巫女とその伯父によって少年の見た怪物の正体が解き明かされるという体裁で、「姦姦蛇螺」についての詳細が語られます。

 曰く、それは古くは「姦姦蛇螺」「姦姦唾螺」と呼ばれ、今では俗に「生離蛇螺(なりじゃら)」「生離唾螺(なりだら)、あるいは単に「だら」とだけ呼ばれるもので、古称で呼ぶのは現代では巫女のような特殊な家柄の者だけといいます。
 その昔、ある村は人を食らう大蛇に悩まされており、村人たちはある巫女の家に退治を依頼しました。巫女家は特に力の強かった者を大蛇討伐に向かわせました。激しい闘いの末、巫女は大蛇に下半身を食われてしまいます。村人たちは彼女を見限り、腕を切断して大蛇への生贄として捧げ、見返りに村の平和を手に入れました。
 こうして大蛇は村を去ったにもかかわらず、やがて村人が次々と怪死を遂げるようになりました。遂には村人は四人だけとなり、生き残ったかれらは、「姦姦蛇螺」となって村人に祟っている巫女を鎮める呪法を編み出して、子孫がそれを秘かに、詳しい事情と共に受け継いできたことが示唆されます。
 
 少年たちが目撃した怪物は上半身裸で三対の腕をもつ女の姿で、「い~っ」と口を開けて彼らに近付いてきたといいます。
 彼らは下半身を見ておらず、それがどのような状態なのかも話中では伏せられたままですが、もし下半身を見てしまった場合は怨念を浴びて命は助からなかったと述べられています。
 また「葵」たちが語るところによれば、この姿をしたものは巫女ではあるものの、命を奪う意思はなく「かんかんだら」ではないともされており、核心部分は明かされず、全貌が掴めない語り口となっています。
 


 
 今回とりあげた中では最も新しい現代怪異さんになるのでしょうか。いかにもいそう…にも思えないネーミングですが、ある種のセンスを感じます。下半身を蛇体と解釈した表現がよくされてるのも好きです。
 僕の絵は洗濯物を干してる最中ですかね、たぶん。
 お話の中ではかなり事細かに情報が出されてて、それでいて総体が掴みきれないという、語り尽くせない深い闇を背負ったモノなんだろうと思わせるのも、いかにも!って感じで演出として面白いですね~。長生きしてほしい妖怪です。