インヌ

■インヌ

▽解説

 沖縄県中頭郡に伝わる妖怪です。

 この妖怪の文献上の初出とみられる佐藤清明の『現行全国妖怪辞典』では「インヌ」の項目名で、本文には「インヌ フィー クーテ アッチュン(犬が火を喰はへて歩く妖怪)」とあります。
 これは妖怪「インヌ(犬)」の説明を伝承地の言葉で記したもののようですが、同書を参照した日野巌『日本妖怪変化語彙』では項目名が「インヌフィークーテアッチャン」となっており「犬が火をくわえて歩く妖怪の義」と説明されています。
 その後に出された出版物等では、たとえば村上健司著『妖怪事典』が『現行全国妖怪辞典』のみを出典として挙げながら、妖怪名を「インヌフィークーテアッチャン」とするなど、やや混乱がみられたようです。 


▽註

・『現行全国妖怪辞典』…佐藤清明編。昭和10年(1935)。「方言叢書」の一冊として編まれたもので、日本各地に伝わる妖怪の呼称を列挙するもの。
・『日本妖怪変化語彙』…日野巌著『動物妖怪譚』が昭和54年(1979)に復刊した際に付録としてつけられた語彙集。各種資料から妖怪の名を抜き出し簡易な説明を付したものだが、誤植も多い。
・『妖怪事典』…村上健司編著。平成12年(2000)刊。民俗資料や近世以前の文献等から幅広く材を採った総合的な妖怪事典。


 
 近年も長い方の名前で某スマートフォン向けゲームのキャラクターになってたりもしますね。
 長くて、馴染みがないと奇妙な響きにきこえる名前の方が何かとネタになるし、今さら実は三文字だったんです…なんて言いづらいじゃないですか!というおもしろみ。