鳳凰

■鳳凰[ほうおう]

▽解説

 大陸から伝わった想像上の霊鳥で、その絢爛な姿は日本ほか東アジアの広い範囲で瑞祥として尊ばれ、絵画や彫刻の題材、建築物や調度品の装飾、図案としてもよく用いられてきました。

 古くから知られており、前漢時代の『爾雅』や後漢の『説文解字』にも解説があります。 
 『設問解字』は鳳凰の外見について、前は鴻、後は麟、頸は蛇、尾は魚、額は鸛、腮は鴛、紋様は龍、背は虎、頷は燕、喙は鶏、と様々な鳥獣の特徴をもち、羽毛には五色を具えているとしています。鳳凰は東方の君子の国にいるもので、天下が大安寧であるときに姿を現すといいます。
 明代に編まれた本草学の集大成書といえる『本草綱目』も鳳凰の特徴を同様に記しており、大きさは四、五尺、四海の上を飛翔し、天下に道徳がいきわたっていれば現れるとしています。また、翼は竽(う、うのふえ。竹管を束ねた管楽器で笙に類するもの)のごとく、鳴く声は簫(しょう。竹製の横笛の一種)のようで宮、商、角、徴、羽の五音に適うものであるといいます。
 また、鳳凰は虫を啄まず、生草を折らず、群居せず、連れ立って歩くこともなく、梧桐(あおぎり)のある所にしか棲まず、竹の実でなければ食さず、醴泉(太平の世に湧く甘味の泉)の水しか飲まないといいます。
 そして鳳凰は三百六十種の鳥類の長であり、飛べば他の群鳥がつき従います。
 この他、雄を鳳、雌を凰といい、天にあっては朱雀となるとの説も記されています。あるいは鳳凰はさらに細かく分類できるともされ、羽毛に赤色の多いものが鳳、青の多いものが鸞(らん)、黄の多いものが鵷(えん)、紫の多いものが鸑鷟(がくさく)、白の多いものが鷫鸘(しゅくそう)と呼ばれるとあります。
 これらの記述もまた先行する書物の内容を引いたもので、江戸時代の日本で編纂された『和漢三才図会』もこの記述を引用しています。


▽註

・『爾雅』…中国周代から漢代にかけての諸経書にみえる語を収集整理した辞書。中国最古の辞書とされ、儒家が重んじる十三経のひとつにも数えられる。
・『説文解字』…後漢の許慎の編。中国最古の部種別字典。
・『本草綱目』…中国明代の本草書。李時珍著。全52巻。動植物や鉱物など薬種についての詳細を記述する。
・『和漢三才図会』…江戸時代中期の絵入り百科全書(類書)。大坂の医師・寺島良安の作。全105巻。


▽関連

鸑鷟




 本年のTYZもこれで最後であります。酉年で鶏から始まりましたので、鳥の王たる鳳凰でおめでたく〆です。