森の閻魔大王

■森の閻魔大王[もり‐えんまだいおう]

▽解説

 千葉県木更津市に伝わる十二支の由来を説く昔話のひとつに登場するものです。


 「森のえんま大王」は森を統一し、全てのけものを統べる偉いえんま大王です。
 あるとき大王は、日本は十二ヵ月を一年としていることから、配下の獣たちで十二支を作ってそれに当てはめようと思い立ち「あさってこい、決めるから」と鼠に号令をかけるよう頼みました。
 鼠はその日、方々を巡ってえんま大王のお触れを伝えてまわりました。
 翌日、鼠は猫と出会い、明日に迫ったえんま大王からの招集について尋ねられましたが、日ごろ悪さばかりしている猫に対して、つい「いやあ、そら、あさってだ」と答えてしまいます。

 歩みが遅いからと牛が一足先に出発すると、鼠はその背に便乗し、招集日にえんま大王のもとへ一番乗りを果たしました。こうして牛が二番手となり、他の獣たちも次々に集まって、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥の十二支が定められました。

 誤った日付を教えられた猫は、丸一日遅れてえんま大王のもとを訪れました。
 「えんま大王、きょうだってね」
 「あに(何)をねぼけいた。そら、きのうのことだから、顔でん洗って出直してこい」
 
 このようなことがあってから、猫は年中顔を洗うしぐさをみせるようになり、嘘をついた鼠を今も仇と思っているのだといいます。


▽関連

閻魔大王


 
 十二支の由来のおはなし自体はどこにでも伝わっているものなのですが、十二支選抜者(神様とかお釈迦様なんかがこのポジションにいることが多い)がなぜか森の支配者の閻魔大王さまなのがちょっと面白いですよね。斬新なキャスティング。