大乗院の鬼

■大乗院の鬼[だいじょういん‐おに]

▽解説

 大分県宇佐市四日市の真言宗寺院・十宝山大乗院には鬼のミイラとされるものが安置されており、信仰の対象として祀られています。

 鬼は膝を折って座った状態で高さ140センチ、立ち上がった場合は身長2メートルほどはあるとされ、逆三角形で30センチほどの頭部には二本の角が生えています。また、指は手足ともに三本ずつとなっています。
 昭和初期には九州大学により鑑定が行われたとされており、女性の人骨と動物の骨を組み合わせて作ったものではないかとの見解が出されたといいます。
  
 これはもともと某家の家宝として伝えられていたものが訳あって人の手に渡ったのだといい、以後売買が繰り返され、大正14年(1925)に大乗院の檀家が山口県下関の所有者から買い取ったといわれています。
 その際の「鬼形骨」の売渡証書も現存しており、売却価格は5500円であったことが記されています。
 購入後に檀家は原因不明の病に倒れ、鬼の祟りを恐れてミイラの引き取りを大乗院の住職に依頼しました。
 寺にて鬼の供養が行われると、檀家の病もたちまち癒えたといいます。この出来事が昭和4、5年頃のことといい、以後鬼のミイラは仏様として大乗院に安置されることになり、「鬼様」「鬼神様」などとも呼ばれて崇敬を集めました。

 また、当時の住職は少年時代に生きた鬼と遭遇したことがあり、ミイラを見たときその鬼が帰ってきたと呟いたともいわれています。
 他にも大乗院の鬼を巡る逸話は多数あるらしく、一例として『怪 vol.0032』(2011年)「不思議な街の『怪』散歩」(村上健司)では以下のような話が紹介されています。
 四歳になる男の子が食事時になると胸がムカムカしてものが食べられなくなるという症状に悩まされ、心配した祖母に連れられ母親と共に鬼神様に参拝したときのことです。男の子は「右のまんまんさん」すなわち本堂右側に祀られている鬼の方から「わかったぞ」「もう帰るのか」などと話しかけてくる声が聞こえたと語り、お参りをした後には体調もすっかり良くなったといいます。
 「わかったぞ」というのは、鬼神様が願いを聞き入れてくれた際の返事だったのだろうと捉えられています。