■チクリ
▽解説
湯本豪一著『古今妖怪纍纍』(2017年刊)所載の『妖怪尽くし絵巻』(東海坊散人作、昭和時代)に描かれている妖怪のひとつです。
顔は髷を結った女、体は蠍という奇抜な姿の妖怪で、「チクリ」と名付けられています。
なお、女の顔は既存の図版を模倣したものらしく、これを蠍と組み合わせて「チクリ」に仕立て上げたようです。
▽註
・『妖怪尽くし絵巻』…東海坊散人(未詳)が昭和期に制作した妖怪絵巻。創作と思しき10種類の妖怪が描かれている。湯本豪一氏所蔵の2作品が確認されているが、制作の経緯や意図等は不明。
チクリ考察については、氷泉さんの『大佐用』第127号もぜひご覧ください。
『古今妖怪纍纍』の中身が公開されたとき、まず目に飛び込んで僕の度肝を抜き取っていった妖怪です。いやいや、こんなとてつもないビジュアルの妖怪ほっとけるわけがないでしょ!
昭和生まれの(たぶん)個人の創作モノとなると、それは貴方にとって妖怪そのものとして扱い得るモノですか?という問いも発生してくると思うのですが(妖怪モチーフのキャラクターとかモンスター寄りの存在と捉える方もいることでしょう)、そこを敢えて妖怪資料の一種として紹介したのは『纍纍』の興味深い荒業ではないでしょうか。作者じゃない人物の手でこういう書籍に掲載されたことで名実とも「妖怪」になっていくんだとも考えられるわけで……。
コメント
コメント一覧 (2)
ショッカー怪人チックというか、少なくとも江戸以前の我が国の妖怪のそれではない
同じ個人の創作物であっても、やはり「古い」「由緒正しい」もののステイタスは認めて
最近生まれたものにはついつい冷たくなってしまうんですよね
私なんかも「クトゥルー如きがいっぱしの神話ヅラすんなヤ」とか思ってしまう性質で
チクリも妖怪だ!と紹介されるとう~ん、となってしまうような……
チクリの絵もあと100年後の人類に発見されてたら受け止め方が違ったのかな? なんて思ったり。
とはいえ、このとてつもない外見とやや特殊な出自を含め、今の時期にこそ非常にオイシイ妖怪(広義)ではあると思いますね!