とうもろこし

■とうもろこし

▽解説

 とうもろこしは天正七年(1579)に日本へ齎されたとされ、以後九州から日本各地へ伝播していったといわれています。
 南蛮船が運んできたことから南蛮黍(なんばんきび、なんばきび)とも呼ばれるほか、高麗黍、唐黍などといった名称もあります。

 とうもろこしが異状を呈する怪異は文献上にしばしば記録されており、異様に大きな粒が生った、死んだ娘の信心の結果として蓮華が咲いた、愛玩していた鶏のような形になった、などの例が挙げられます。
 また自宅の庭にとうもろこしを植えることを忌避する俗信も各地にあり、特定の家、特定の姓の者だけが栽培を禁忌としている場合もあったようです。

 妖怪が登場する草双紙や戯画、双六などおもちゃ絵の類にもとうもろこしの妖怪の姿をみることができます。
 たとえば、歌川国芳が弘化元年(1845)頃に描いた『道外とうもろこし』は、下総国羽生村で起きた累(かさね)の幽霊談のパロディとなっており、累の姿を模したとうもろこしのお化けが川の堤から現れ、自分を殺した夫の与右衛門(こちらは顔が唐茄子になっています)を脅かす場面が描かれています。


▽関連


品川の玉蜀黍



 実はつぶつぶの集合体だし、葉がだらりと垂れるとまるで幽霊の手のよう。見ようによっては意外と不気味な植物なんだと気づかされます。