へび女

■へび女[-おんな]

▽解説

 『怪談摸摸夢字彙』にある妖怪です。

 同書の「へび女」の図には、裁縫箱によりかかって眠る女と、縁側の物干竿に絡みついて彼女を見つめているような蛇の姿が描かれています。

 曰く、蛇女は丹波国の山出しの女で、朝夕骨を惜しみ、顔は仏頂面、尻は挽臼のように重々しく、口を開けば剃刀のように鋭い言葉を発し、仮病と蛇を使うのが得意であるといいます。
 眠りを好むという獣の「あしか」に見込まれたものとみえ、日が落ちて行灯に灯りが点る頃にもなれば繕い物も途中で放り出して居眠りし、昼間も台所で炭消壺によりかかって船を漕ぐ始末。いびきはまるでうわばみ(大蛇。いびきをかくと信じられ、大鼾の慣用句に用いられる)のようだといいます。
 そして、親の因果が子に報いるというが、この場合はこんな女を妻にした旦那が因果者だ、と締めくくられています。

 眠りこけるへび女は「久三(九三郎。下男奉公をする者のこと)どの、棚のすりこぎが鉢へ身を投げた。助け舟、助け舟」とおかしな寝言を発しています。


 だらだらと怠ける様子を蛇にたとえることがあり、これを見世物小屋の蛇使いの芸人などとかけて、怠惰な女房を見世物に出された珍獣、畸形のような調子で扱ったものが、この「へび女」です。


▽註

・『怪談摸摸夢字彙』…山東京伝作、北尾重政画。享和3年(1803)刊。よく知られた妖怪や既存の言葉を滑稽にもじり、化物絵本風に紹介する。


 
 怠け者のおばけみたいな嫁さんで愛想はないし口は悪いし……ってことで考えようによっては恐ろしいのですが、元の本にある絵の方はなんだか和やかにみえて癒されてしまいます。猫もくつろいでるし。