蛇腹女

■蛇腹女[じゃばらおんな]

▽解説

 『百鬼夜講化物語』にある妖怪です。

 その名のとおり蛇のような胴体で、額にも目をもつ女妖怪が男を捕えようとする場面が描かれています。
 これは縫箔屋(刺繍と摺箔を用いて衣服に紋様を施す職人。単に刺繍屋のことを指す場合も)の女房が化けたもので、目の大きさは火事羽織の紋所のようであるといいます(大名火消が着る火事羽織の背などには大きな家紋が染め抜かれていました)。
 和服の縫い方のひとつである「蛇腹伏せ」からの連想で縫箔屋や火事羽織といった言葉が連ねられたものと考えられます。

 蛇腹女は男に向かって「うぬを攫って西の海へ連れてゆくぞ。蛇腹女の御寿命申さば」と節分の厄払いのようなことを言い(「御寿命申さば」と寿命長久を祝い、厄を「西の海へさらり」と捨てて締めくくる)、対する男は「鉤裂き(釘などに引っかかり衣服が鉤型に裂けること。これも刺繍からの連想)のできぬように、そっと捕まえてくんな」と頼みこんでいます。
 

▽註

・『百鬼夜講化物語』…黄表紙。古狼野干作、享和2年以前の刊。見立て絵や有名な怪談のパロディ的な妖怪図19種を収録。