山地乳

■山地乳[やまちち]

▽解説

 『絵本百物語』にある妖怪です。

 蝙蝠は功を経て野衾(のぶすま)となり、それが更に年を経て山に隠れ住む山地乳なる怪に変化するのだといいます。
 この山地乳は眠っている人の様子を窺って近寄り、その寝息を吸うといいます。
 寝息を吸われたとき、誰か他の人が見ていれば必ず長寿となり、見る人がいなければ翌日には死んでしまうと伝えられていました。実際には山地乳のために死んだ人や長生きした人はいなくとも、山地乳といえば所により非常に恐れられたといいます。

 『絵本百物語』にみえる山地乳(山地々)は手足が細長く全身が毛に覆われた怪物で、眠っている若い男の顔を掴んで寝息を吸い取っている様子が描かれています。
 絵に添えられた説明文では、山地乳は寝息を吸った後に胸を叩くことで人を死に至らしめるとされています。また、これは奥州に多くいるものと伝わるとも記されています。


▽註

・『絵本百物語』…天保12年(1841)刊の怪談集。桃山人作、竹原春泉斎画。副題『桃山人夜話』。