ぬらりひょん

■ぬらりひょん

▽解説

 薩摩に伝わる『大石兵六物語絵巻』に登場する狐が化けた妖怪の一種で、主人公の若侍・大石兵六を脅かすために現れます。


 巧みに人を騙し、髪を剃り落としてしまう薩摩の悪狐たち。その退治に出かけた大石兵六ですが、既に宇蛇、簑姥上、三目猴猿という化物たちと立て続けに遭遇して震え上がり、頼みの刀まで投げ捨ててこけつ転びつ逃げ去る有様でした。

 そこへ、今度は「兵六どの、兵六どの。なんぼ逃げても逃れはせじ」と呼びかける声が聞こえてきました。
 「尋常に片足か片手か噛ませていかねば、一口にしてやる!」
 現れ出たのは面の長さだけで一丈あまり、びいどろ(ガラス)のような肌に細首、糸目、鼻筋高く口広く、緋色の衣に輪袈裟をかけ、水晶の数珠を爪繰る坊主の化物。
 「我はぬらりひょんという僧なり。大根漬けの代わりに片足御奉加にあずかり、精進上げをつかまつりて、座禅の眠りを覚まさん」
 歩み寄ってくるぬらりひょんを二目と見ず、兵六は泣き喚きながら逃げ出していきました。
 
 しかし、彼の受難は終わりではなく、この後もまだまだ妖怪たちは現れるのでした。


 絵巻には詞書のとおりの僧形の妖怪が数珠をぶら下げて兵六を怖がらせる様子が描かれています。
 『百怪図巻』などの化物尽くし絵にも「ぬらりひょん」という妖怪が描かれていることがよく知られていますが、どのような関連性があるのかは分かっていません。


▽註

・『大石兵六物語絵巻』…薩摩の大石兵六という若侍による狐退治の顛末を描いた絵巻で、狐が化けた様々な妖怪が登場する。複数の作例が確認されている。


▽関連
 
ぬらりひょん



 よく総大将あつかいされるぬらりひょんと同名ですが、ハゲてる以外は印象がかなり違ってて面白いです。こっちの派手な狐ぬらりひょんもステキ。