天魔羅醯室陀鬼

■天魔羅醯室陀鬼[てんまらけいしつだき]

▽解説

 岡山県岡山市の金山寺や愛知県名古屋市の真福寺に伝わる『伝死病種事』では、伝死病(伝尸病とも。結核などの肺病)を引き起こす五種の鬼たちの姿が図入りで示されています。

 天魔羅醯室陀鬼は三番目に挙げられる鬼で、頭は鶏、体は人のように手足があり、虎の毛皮を腰に巻き、手には槌を握っているとされます。この鬼は人に道理から外れた瞋恚(憎み怒ること)や悪心を抱かせるといいます。

 鎌倉末期頃の写本が残る『伝屍病肝心鈔』には、伝屍病鬼の別名として「魔鶏室陀鬼」が挙げられており、天魔羅醯室陀鬼と同様のものであろうと思われます。
 このような伝屍病鬼は青面金剛を祀る呪術や灸によって退治することができるとされています。