■ペロリ太郎[‐たろう]
▽解説
水木しげるの著作などで紹介されている妖怪です。
たとえば、『日本妖怪大全』では次のような説明がなされています。
昔、ある所に「ペロリ太郎」と呼ばれる若者がいました。彼は食事の量がとてつもなく多く、一度の食事で十人前、二十人前を軽く平らげてしまうため、このような名で呼ばれていました。
両親は一日中ものを食べてばかりいる「太郎」が手に負えなくなり、ある時とうとう家から追い出してしまいました。
すると、「太郎」は道行くすべての人々に食べ物をせがむようになりました。
いくら食べても満たされない太郎は、ついに人間の肉を食ってしまおうと考えました。
そうしていつのころからか、人々は往来でペロリ太郎に出会うと、すぐ逃げだすようになったのだといいます。
妖怪画の「ペロリ太郎」は、熊本県八代市の松井文庫所蔵『百鬼夜行絵巻』にある「べか太郎(表記は「べくわ太郎」)」の図を元にして描かれたものです。
原図の変体仮名「わ(王)」を「り(里)」と読み違えて「べろり太郎」として紹介している書籍もあり、「ペロリ太郎」という妖怪名はここから派生したものであると推測できます。
なお、水木は出典について「江戸時代には〝魔よけの巻物〟と称する巻物があり(略)その中にこのペロリ太郎も入っていた」と記しています。「巻物」は松井文庫の絵巻などを指しているようですが、これら化物尽くしの絵巻には妖怪名以外の詞書がないのが常であり、「ペロリ太郎」の物語に出典が有るのかは明らかになっていません。
後年の出版物では同図の題が「べか太郎」に改められ、説明文も『百鬼夜行絵巻』のべか太郎に関して述べたものに変更されています。
▽註
・『日本妖怪大全』…水木しげる著。日本の妖怪425種を紹介する。平成三年(1991)刊。
・『百鬼夜行絵巻』…尾田淑太郎(郷澄)による妖怪絵巻。天保3(1832)年制作。熊本県松井文庫所蔵。名称なしのものも含めて58種の妖怪が描かれている。
▽関連
・べか太郎
なんの因果か生まれ持った尋常ならざる食欲のせいで飢えに耐えかねて食人鬼になっちゃうという凄く怖いお話なので非常に印象深かったのですが……ちょっとお化けの本を読みだすと、彼の来歴が出所不明のものだと気づくわけです。そうこうしてるうちに水木本からも彼の存在は消えてしまって、なんだかちょっと寂しいような気分で。
どこからきて、そしてどこへ!
コメント
コメント一覧 (1)
もはや道徳や信仰で収拾をつけられる範疇にない、やるかやられるかの話ですよこれは
イラストも自分の境遇を嘆いたり周囲の人間を恨むとかの複雑な感情や知性を
まったく感じられないのが恐いです。完全に動くモノをとっつかまえて喰うカエルと一緒
人を食うのも他に食べるものが無いからなしくずしに
そうすることにしただけで、大して葛藤や罪悪感のようなものも無さげに見えます