有馬の女化物

■有馬の女化物[ありま‐おんなばけもの]

▽解説

 『諸国百物語』には、「尼が崎伝左衛門湯治してばけ物にあひし事」として、有馬温泉(兵庫県神戸市)に現れた化物のことが記されています。


 摂州尼崎の伝左衛門という者が、あるとき有馬へ湯治に出かけました。
 湯に浸かっていたところ、偶然若い美女が訪れ「私も湯に入れてくださいませ」と声をかけてきました。
 女であったため伝左衛門も気を許して共に入浴していると、今度は「お背中の垢を洗い流しましょう」と言います。
 任せてみるといかにも快く、とろとろと夢心地になっていると、いつしか伝左衛門の背中は肉を全て削ぎ落とされ、骨ばかりにされていました。
 気がつけば女の姿は消え失せてどこにもなかったといいます。

 このようなことがあるため、湯治場には女の化け物がいると昔から伝えられているとのことでした。
 

▽註

 ・『諸国百物語』…延宝5年(1677)刊行の怪談集。作者不詳。全5巻、各巻に20、計100話の怪談を収録。



 怖すぎる……。混浴には気をつけよう。