烏天狗

■烏天狗[からすてんぐ]

▽解説

 天狗のうち、鳥類のごとき容貌や羽を具えるもののことを一般に烏天狗と呼びます。
 もともと天狗は猛禽を思わせる半鳥半人の妖怪として描かれるのが主流で、各種の絵巻物には法衣や山伏装束に身を包んだ嘴のある天狗の姿がみられます。
 知切光歳は『天狗の研究』(昭和50年)で「室町末期の頃までの天狗は、みんな背中に羽根を背負った鴉天狗の姿だった」と述べ、大天狗小天狗の格の違いを示すために異なる姿でも表現されるようになったとしています。
 よって、はじめから烏天狗の名があったわけではなく、鼻高で赤い顔をした天狗像の出現に伴って、両者の区別のために呼び分けられるようになったものと考えられます。烏天狗は格下の存在とみられる場合が多く、小天狗、青天狗とも呼ばれています。



 民間伝承における烏天狗の話は、末広昌雄が『あしなか』に寄せた「伊予路の天狗噺」にある愛媛県西条のものが、多くの書籍に引用されてよく知られています。

 ある村人が六歳の子を連れて石鎚山に登ったとき、山頂で少し目を離した隙にその子が天狗に攫われてしまいました。
 いくら探しても行方は知れず、やむなく家に帰ってみると、子供の方が先に帰宅していました。
子供によれば、山頂の祠の裏で小便をしていると、真っ黒い顔の大男が出てきて「こんな所で小便をしてはいけないよ」と窘めたといいます。そして大男は「おじさんが家まで送ってあげるから目をつぶっておいで」と優しく言い、気がつくと子供は家の裏庭に立っていました。
 これは石鎚山に棲む烏天狗の仕業とされています。


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