羊太夫

■羊太夫[ひつじだゆう]

▽解説

 羊太夫(羊大夫、多胡羊太夫藤原宗勝)は上野国多胡郡の郡司を務めたとされる伝説的人物です。群馬県高崎市に残る金石文の古碑「多胡碑」にみえる多胡郡の支配者「羊」に深い関わりがあると考えられています。

 伝説はおおむね以下のような内容で語られています。

 昔、羊太夫は神通力をもつ従者の八束小脛に名馬を引かせ、上野国から奈良の都へと日参していました。
 あるとき、眠っている八束小脛の脇に羽が生えているのを見つけた羊太夫は、戯れにこれを抜いてしまいます。そのせいで八束小脛は速さを失って、羊太夫も今までのような参内が叶わなくなってしまいました。
 朝廷は姿を見せなくなった羊太夫に謀反の疑いをかけ、多胡に軍勢を送り込みます。
 応戦するも劣勢に立たされた羊太夫は、落城の寸前に金の蝶あるいは鳶に化身して飛び去っていきました。生き残っていた八束小脛も同様に姿を変えて飛び去ったといいます。


 愛知県名古屋市にある羊神社は羊太夫が火の神を祀ったのが始まりとされ、群馬県安中市の羊神社は羊太夫を祭神としています。