石羊

■石羊[いしひつじ]

▽解説

 『信濃奇勝録』に記述のある獣です。

 信濃の諏訪郡矢ヶ崎村には永明寺山という高い松山があります。その南面の中腹には谷があり、数百の岩石が累々と積み重なって洞穴が生じ、滴る水が流れを作っています。
 この場所には鹿ほどの大きさの異獣が棲んでいるといわれていました。毛色もまた鹿のよう、あるいは黒白の斑があり、頭は小さく、長い体毛を垂らして四足を覆い隠しています。
 平常その姿を現すのは稀ですが、暑い夏の雨上がりには外に出てきて、蚯蚓を掘り出すような行動をとっているのがみられたといいます。

 山の近くには村里があるものの、この獣を見た者は少なく、たまたま目撃した人が石羊と名付けたといわれています。また毛長狢(けながむじな)、被狢(かぶりむじな)とも呼ばれていました。
 群れをなして行動するもので、その数は二十余りにも上るといいます。
 里の医師である河合正阿は松露を採りに行った際に、三十間ほど先にいる石羊を見たといい、『信濃奇勝録』にはその証言を元にした三頭の石羊の図が添えられています。


▽註

・『信濃奇勝録』…江戸時代末期に成立し、明治期に出版された信濃国の地誌。井出道貞著。話題は奇勝、文物、動植物など多岐に渡る。




 結局なにものだったんでしょう。
 毛を刈ってないアルパカみたいなイメージですが。