松茸の化物

■松茸の化物[まつたけ-ばけもの]

▽解説

 文溪堂作、鳥居清経画の黄表紙『怪談豆人形』(安永8年)に登場する化物です。


 ある時、小人島に住む豆のように小さな化物たちは「この土地にいて色々化けても面白くもない」と、化け方の修行のため日本への渡航を思い立ちます。
 そして大船の帆柱の穴に隠れて大坂に着くと、化物たちはあちこちを見物して回り、人や物の大きさに肝を潰します。
 それでもめげずに花の名所・吉野山へと赴き、妹山の芋掘坊と背山の背虫坊という化物に教えを乞いました。ところがふたりの化物は、小化物たちを「耳の中へ入って垢をさらってくれぬか」などとからかって、まともに相手をしてくれる様子はありません。
 続いて訪ねた嵯峨の化物や富士の大太法師も同様で、小化物は巨体に圧倒されて逃げ回るばかりです。

 そして三保の松原までやって来ると、そこに松茸の化物が現れました。
 「われはなんだ。小さいものだな」と声をかけてきたので事情を話すと、松茸の化物は小化物たちの逗留を許し、「貴様たちはまず、なりが小さいから人が怖がらぬ」との助言を与えました。
 その後、松茸の化物は箱根山への道を詳しく教えて「ずいぶん精出して修行したまえ」と送り出してくれました。
 しかし箱根山の化物にも弟子入りは叶わず、日本にいてはどんな目に遭うかわからぬからと帰国を勧められる始末。
 江戸に下った小化物たちは、最後に町家の人々を脅かしてから帰ろうとしますが、やはり小さな体では恐れられません。逆に人間のおもちゃにされてしまい、散々に弄ばれた挙句に捕まってしまいます。
 最後には雪舟が描いた鶴を本物と思って仰天し、化物たちの姿はどこへとも知れず消え失せてしまいました。





 松茸師匠としてソフビ化もされた人格者のキノコです。
 小人島の化物たちからは巨大に見えてますが、たぶん普通の松茸サイズですね。だからこそ小さい者たちの気持ちも汲んであげられたのでしょう。