■神虫[しんちゅう]
▽解説
十二世紀後半に制作された『辟邪絵』(奈良国立博物館蔵)に描かれた、邪鬼や疫鬼を退散させる善神の一種です。
八本の足や羽を有する巨大な虫で、鬼を取り食らい周囲を血に染めている場面が描かれています。虫の体は鬼たちよりも遥かに大きく、手は鬼を一掴みにしてしまうほどに力強いものです。鬼も神虫を恐れている様子で、捕獲を免れ一目散に逃げだす者の姿もあります。
詞書によれば、神虫は瞻部州(仏教の世界観で人間が住むとされる大陸。閻浮提)南方の山中に一体が棲んでおり、諸々の鬼を食糧としています。その食欲たるや凄まじく、朝に三千、夕には三百の鬼を取り食らうといいます。
▽註
・『辟邪絵』…邪悪な鬼を退散させるため荒々しい神の姿を描いたもの。奈良国立博物館本(旧称:益田家本地獄草子乙巻)には天刑星、栴檀乾闥婆、神虫、鍾馗、毘沙門天が描かれている。
鬼が夜に出歩くのは神虫に食べられにくい時間帯だったから……?
どこか愛嬌のある顔でありながら有無を言わさず鬼どもを食い尽くす無敵な感じが頼もしくて素晴らしいです。
コメント
コメント一覧 (6)
名前がまたざっくばらんですな、神界隈だと虫でもこんなでかいのかっていう
解説では飛ばしてますが「もろもろの“虎”鬼を食とす」とのことなので、このお方つくづく凄まじい食性ですよ
人間は食わず嫌いか何かだと可愛いなって。
荒々しいふるまいをとるものの顔は妙に愛嬌がありますから、なにか可愛い習性もあるのではと想像できて楽しいですよね