火車

■火車[かしゃ]

▽解説

 生前に罪を犯した亡者を迎えて地獄に送る、あるいは地獄で罪人を責める道具として、車輪部分が燃え盛る火炎になっている車(火車、火の車)が用いられると考えられてきました。
 各種の説話集などには悪業の報いとして、この火車が罪人の身を(場合によっては生きたまま)連れ去る話が記されています。
 六道絵や熊野観心十界曼荼羅には獄卒が引く火車で亡者が苦しむ様が描かれ、化物尽くし絵巻には「火車」の名でやはり火の車とそれを引く獄卒らしき化物の姿が描かれています。

 民間伝承においては火の車そのものでなく猫などの化物が死体を奪い去るとも考えられ、「カシャ」やそれに類する名(キャシャ、クワシャ、クシャなど)の妖怪が各地に伝承されています。
 鳥山石燕が『画図百鬼夜行』に描いた火車の姿もこれらの伝承を踏まえた描写となっています。こちらは人ほどもある猫のような姿をしており、二足で立って脇に死骸を抱えています。


▽註

・『画図百鬼夜行』…鳥山石燕の妖怪画集第一作。安永5年(1776)刊行。
  
▽関連

魍魎