小豆とりの狸

■小豆とりの狸[あずき-たぬき]

▽解説

 広島県尾道市に伝わる妖怪です。

 土堂町の桂馬蒲鉾商店があるあたりはかつて石畳の敷かれた船着き場で、西側には海沿いに大きな蔵が並んでいました。
 その頃、蔵の近くでは毎晩「シャリ、シャリ」と高く鋭い音が聞こえていました。
 鼠が走り回る音でもなく、鼬が騒ぐ音でもなく、人々はこれをとても気味悪がっていました。
 ある晩、一人の若者がこの蔵の傍を通りかかりました。すると噂通りの「シャリ、シャリ」という音が聞こえます。
 近づいてみると、どうやら音は蔵の中から聞こえてくるようでした。怖いながらも正体を確かめてやろうと、若者は蔵に向かって「わぁー」と大声を出してみました。
 途端に音はやみ、蔵からは何か丸いものが飛び出してきました。丸いものは短い足を動かして、そのまま千光寺山の方へと走り去っていきます。若者がその姿をよくみると、正体は狸であると分かりました。
 このようなことがあってから、例の音は狸が蔵の中の小豆を狙って来るときの音だと噂されるようになりました。
 真相が明らかになってもなお気味が悪く、暗い夜に「シャリ、シャリ」と音がすると、子供らは急ぎ家に帰ったといいます。


▽関連

小豆洗い





 噂が広がる中で小豆とぎが小豆とりになっちゃったのでしょうか。ただ音を立てるだけならまだしも、泥棒となると実害があるので厄介です。