吉原の怪女

■吉原の怪女[よしわら-かいじょ]

▽解説

 『絵本小夜時雨』には、「吉原の怪女」と題して次のような話が記されています。

 吉原遊郭での出来事です。
 女郎たちの話し声を廊下で耳にしたある客が、何を話しているのか聞こうと座敷へ近づいた時、同じ座敷へと歩く太夫の姿がありました。
 客の男が戯れに打掛の裾を引っ張ると、太夫は振り返って顔を見せました。
 なんと、その太夫は日月のごとく輝く眼、耳まで裂けた口という恐ろしい容貌の持ち主で、睨みつけられた男は気を失って倒れてしまいました。
 このようなことがあったため、彼は二度と遊所に通わなくなったといいます。


▽註

・『絵本小夜時雨』…絵本読本。速水春暁斎画作。寛政12年(1800)刊。数々の怪談、奇談を収める。