■乳の親[ちー-うや]
▽解説
乳の親(チーノウヤ、チーヌウヤ)は、沖縄県山原地方に伝わる妖怪です。
きわめて優しい顔つきの女の姿をしており、黒い洗い髪と大きな乳房も特徴的だとされています。
嬰児や六歳以下の子供が死んだときには、死後にこの乳の親が乳を飲ませて養うといいます。このため小児が死ぬと、重箱を盛って乳の親を頼む祭が行われました。
国頭村や大宜味村には子供を葬った童墓というものがあり、ここに乳の親がいると考えられました。
今帰仁村では幼児に鏡を見せると、時に水面をも鏡と思って水辺へ行きたがるようになり、水中にいる乳の親に引きずりこまれてしまうといわれました。このため、幼児には鏡を見せるものではないとされていました。
国頭郡大宜味村字喜如嘉には次のような話が伝わっています。
ある若夫人が第二子を出産しました。その子は生後五、六ヶ月の間はすくすく成長していましたが、ふとした風邪が元で病床に就いてしまいました。
母親のみならず祖父母、親戚も赤ん坊を心配し、昼夜の別なく看病に当たりました。その甲斐あって容態も次第に良くなり、皆が安心しているときのことでした。
子の寝室の戸口を半間ほど開けておいたところ、前に大きな乳の女がいて、ニコニコ笑いながら「コッチ御出」と招いているのを母が見つけたのです。
驚く間もなく女の姿はぱっと消え、夜半の月が庭の棕櫚の木を寂しく照らすばかりとなりました。
奇怪な出来事に驚いた母は祖父母を起こしましたが、時すでに遅く我が子の容態は急変しており、呼びかけにも答えず、段々と冷たくなっていったといいます。
また、次のような話も伝わっています。
昔、ある所に毎晩お菓子を買いに来る婦人がいました。
いつも洗い髪で子供を抱いており、いくらかの菓子を買っては子に与え、いそいそと帰っていきました。
この婦人がどこの人であるかは店の者も知りませんでしたが、彼女が訪ねてくるようになってからというもの、毎日午後になると里外れの古墓から子供の泣き声が聞こえるという噂が広まっていました。
婦人が店に来る時には何の異常もなく、また泣き声は真昼でも聞こえると言って不審がった人々は、遂に墓を開けてその中を調べてみました。
するとそこには生きた赤ん坊がいて、他愛なく泣き叫んでいます。驚いた店の者が今までの菓子代を調べてみると、それらは全て紙銭を焼いて炭にした物でした。
それからは誰言うとなく、これは乳の親の仕業だと噂されるようになったといいます。
▽関連
・産女
・子育て幽霊
現在出回っている乳の親の解説文は、島袋源七『山原の土俗』という本が大元となってまして、そこでの胸の記述は「お乳が特別に大きいものとせられてゐる」となっているんですよね。
おちちがとくべつにおおきい!
嗚呼、美しい日本語!
コメント
コメント一覧 (3)
だっていつも うなぎおとこ とか変態ばっかですもの。
…そんなことはないですね(笑)
絵の上手さに毎回嫉妬しながら見ております(笑)
その右手をよこしなッ!(赤面)
右手ぽろり
子供の為に、お菓子を買う話は怪談の子育て幽霊みたいで
良い話なんだけど、妙に悲しいっつーか切ない話でした。