人形神

■人形神[ひんながみ]

▽解説

 富山県礪波地方に伝わる憑物の一種です。

 ヒンナとは人形のことで、かつては急に財産家となった家があると「あの家はヒンナを祀っている」などと噂されました。

 ヒンナ神は「墓場の土を三年の間に持ってきて三千人の人に踏ませたもの」から作るといい、これよりも念の入ったものとなると、七つの村の七つの墓場から持ってきた土を人の血で捏ね、自分の信じる神の形に作り、更に人のよく通るところに埋めて千人に踏ませるといいます。

 あるいは、三寸ほどの人形を千個作って鍋で煮ると、一つだけ浮かび上がってくるものがあります。
 これはコチョボというもので、千の霊が宿った人形だといいます。
 これらヒンナ神を祀ると、欲しい物はなんでも持ってきてくれる上に、次々用事を言いつけなければ「今度は何だ、今度は何だ」と催促するまでになるため、家はたちまち裕福になります。
 しかし一度ヒンナ神を祀れば、祀った者が死んでも離れることはなく、死ぬときには非常に苦しみ、遂には地獄に落ちるという代償があるとされています。





 並の執念では作れそうにない人形ですが、そうして生まれた人形神自身も相当に執念深い性質の持ち主で、なんだか怖い話だなぁと思うのでした。