手の目かじり

■手の目かじり[て‐め‐]

▽解説

 水木しげるの著作で紹介されている妖怪です。
 その絵姿と解説文から、『諸国百物語』の「ばけものに骨をぬかれし人の事」に登場する化物のことを指していると考えられます。

 「ばけものに骨をぬかれし人の事」は、以下のような内容です。
 
 京都七城河原の墓地には化物が出ると伝えられていました。あるとき若者たちが集まり賭けをして、一人の男が夜半に墓場へ肝試しに行くこととなりました。
 男は墓にやって来ると、証拠の杭を打ってから帰ろうとしました。すると、身の丈八尺、白髪で、掌にも目がついている八十歳ほどの老人が現れ、二本の前歯をむき出して男を追いかけてきました。
 男もこれには肝を潰し、最寄りの寺へ駆けこみました。助けを求められた僧は、ひとまず男を長持の中へ隠すことにします。
 やがて化物も寺へ来て、男を探し回りはじめました。
 そして長持の方から何やら骨を齧るような音と、うめき声が聞こえてきました。この音を聞いた僧は、あまりの恐ろしさに身動きがとれませんでした。
 化物が去った後に長持の蓋をあけてみたところ、中の男は骨を抜き取られて皮ばかりになっていたといいます。

 『諸国百物語』の文中にこの化物の名は示されておらず、「手の目かじり」という名は『画図百鬼夜行』にある「手の目」を踏まえて後付されたものであると思われます。


▽註

・『諸国百物語』…延宝5年(1677)刊行の怪談集。作者不詳。全5巻、各巻に20、計100話の怪談を収録。
・『画図百鬼夜行』…鳥山石燕の妖怪画集第一作。安永5年(1776)刊行。


▽関連

手の目





 手の目かじりて……なんと投げやりなネーミングでしょう。
 そりゃあ手の目(の元ネタ)だけども。骨かじってるけども。