手の目

■手の目[て‐め]

▽解説

 『画図百鬼夜行』にある妖怪です。

 掌に目がある座頭の姿で、生い茂るすすきの中から現れた様子で描かれており、名前の他に石燕による解説は記されていません。

 この妖怪は、『諸国百物語』巻三の「ばけものに骨をぬかれし人の事」という話に登場する化物をモデルに、賭け事に関連する洒落を織り込んで創作されたものであると考えられています。
 たとえば、手に付いた目は手目(博打でのいかさま)を表し、目のついた手を挙げるようなポーズは「手目を上げる(いかさまの証拠をあげること)」を連想させます。また、すすきを含めた絵柄全体で花札の坊主(八月の札・芒の別称)を表してもいるようです。


 児童書などでは、殺害された座頭の怨念が仇敵を探すため手に目を開かせたといった解説がなされることもありますが、前述の通り原典となる石燕の図に解説はありません。そのためこのような話は絵から想像して後世に付け足されたものであるといえます。


▽註

・『画図百鬼夜行』…鳥山石燕の妖怪画集第一作。安永5年(1776)刊行。
・『諸国百物語』…延宝5年(1677)刊行の怪談集。作者不詳。全5巻、各巻に20、計100話の怪談を収録。


▽関連

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