げじげじの化物

■げじげじの化物[-ばけもの]

▽解説

 げじげじ(ゲジ、蚰蜒)はその異様な外見のためか、百足や蜘蛛と同じく害虫として嫌悪されたり、不吉な存在とみなされることがありました。

 妖怪を題材とした江戸時代のかるたには、「げじげじの化物」という札をもつものがあり、絵札に描かれた化物の姿は、後に水木しげるの妖怪画「百足」の元絵として採用され広まることとなりました。

 げじげじになめられると髪が抜け落ちるという俗信が各地に伝わっていますが、山崎美成は『世事百談』の中で、これはもともと虫ではなく下食(げじき)という鬼神のことをいったもので、唐土でいう鬼舐頭(きていとう)の病だろうと述べています。
 『江家次第』を引いて、歳下食の日(天狗星の精が下界に下りて食を求めるとされた日)に沐浴すれば、鬼に頭を舐められて髪が抜けると考えられていた例などを挙げ、俗にいうげじは下食が略された言葉であると結論付けています。


▽註

・『世事百談』…山崎美成の随筆。天保14(1844)年刊。
・『江家次第』…大江匡房による有職故実書。平安時代後期成立。


▽関連

百足