ペンタチコロオヤシ

■ペンタチコロオヤシ

▽解説

 樺太アイヌに伝わる妖怪で、その名は「ペンタチ・コロ・オヤシ」で「松明を・持つ・おばけ」を意味しています。
 夜中に松明をかざして歩き回り往来の人々に怪をなすといい、次のような話が伝わっています。

 樺太東海岸の北部にトユクシという集落がありました。
 ある夜、この村の酋長が急用でコタンケシ集落へ向かっていると、ペンタチコロオヤシが後をつけてきました。
 松明の火が雪に映じて、夜道はまるで昼間のように明るくなります。臆病なトユクシの酋長は怯えながらコタンケシ酋長のもとへたどり着くと、化物につけられたことを話しました。
 勇敢なコタンケシの酋長は自慢の刀を携え、トユクシの方へ出かけていきました。
 しばらく進むと、案の定背後から何者かが近づく気配がします。そっと振り向いて窺うと、やはりそれはペンタチコロオヤシでした。
 酋長は密かに刀を構え、化物が近づいてきて自分に触れようとした瞬間にズブリと突き刺しました。化物は手足をばたばたさせてもがき、これを見た酋長も気を失ってしまいました。
 しばらくして目覚めた酋長は一旦コタンケシへ帰り、翌朝他の人々に様子を見に行かせました。
 刀を突き刺されて死んでいたのは、大きなワタリガラスでした。ペンタチコロオヤシは性悪のワタリガラスが化けたものだったのです。