大どくろ

■大どくろ[おお-]

▽解説

 『いちばんくわしい日本妖怪図鑑』など、佐藤有文の著作には大どくろという海の妖怪が登場します。

 船が遭遇するという大きな髑髏の妖怪で、船べりに手をかけて海上の同じ区域をぐるぐると引っ張り回すといいます。
 大どくろに捕えられた船の乗員たちは逃げ出せないままに水も食料も尽き、やがて痩せ細って死んでしまいます。

 挿絵には葛飾北斎の錦絵『百物語 こはだ小平二』が使用されています。これは題の通り小幡小平二の亡霊を描いたもので、大どくろなる海の妖怪との関連はありません。
 大どくろの挿絵は本来の図から90度傾けられた状態で掲載されており、蚊帳を覗く小平二の姿が船縁に手を掛ける髑髏の妖怪を連想させます。

 どのような資料に依拠するものか不明であり、無関係な妖怪画を挿絵として用いていることから児童書向けに創作された妖怪であると考えられます。



▽註

・『いちばんくわしい日本妖怪図鑑』…佐藤有文著。昭和47年(1972)、立風書房刊の子供向け妖怪本。数十回に渡って重版された。