手之子大明神

■手之子大明神[てのこだいみょうじん]

▽解説

 『奇談雑史』に記されているものです。

 延宝二年(1674)、出羽国米沢領内の村に住む男が、領主の命によって遠方へ奉公に出ることになりました。
 男には妻がおり、自分の留守中に他の男と密通することを心配して、七十余歳の親族の老爺に監視役を依頼しました。
 老人は男の頼みを堅く守って毎夜女の横で眠り、浮気防止のために手を女の陰部に載せていました。
 老人自身は高齢のため女を犯すことなど出来ず、毎晩陰部に掌を置いているのみでした。
 ところが月日が経つにつれ、女の腹は段々と膨らんでくるようになりました。密かに医者に診せたところ、病ではなく妊娠しているということが判明しました。
 臨月を迎えた頃、奉公を終えて夫が帰ってきました。
 当然、夫は妊娠の事実を知って怒り、妻と老人を責め罵りましたが、二人とも不義密通の事実はないと弁明しました。
 男は不審に思ったままでしたが、やがて妻は産気づき、何者かを出産しました。
 集まった人々が見ると、それは赤子ではなく六つの人の手でした。顔がないため泣くことはありませんでしたが、六個の手は確かに生きて動いていました。
 人々は「これは、老人が毎夜陰部に掌を当てていたために、その掌に感じて自然と手を孕んだのだろう」と考え、この手を土中に納めて祠を建て、手之子大明神という神として祀りました。
 これによって、村は手之子村と呼ばれるようになったといいます。


▽註

・『奇談雑史』…宮負定雄の奇談集。文久二年(1862)成立。





 身体の一部だけが生まれてくる話は他にもありますが
 ジジイ他にやりようがあっただろ……。