■舞首[まいくび]
▽解説
『絵本百物語』にある妖怪です。
寛元(1243~1247)の頃、鎌倉検非違使の放免(微罪犯を検非違使の手下としたもの)に、小三太、又重、悪五郎という三人がいました。
伊豆の真鶴が崎で祭があった時、酒席でこの三人が争いを始めました。
小三太と又重は共謀して大力無双の聞こえある悪五郎を討とうとしましたが、悪五郎はそれを見破って一刀のもとに小三太を斬り殺し、彼の首を切断しました。
しかし逃げ出した又重を追跡する途中、悪五郎は山中で石に躓き転倒してしまいます。この好機に又重は悪五郎に斬りかかり、起き上がった悪五郎は又重を刀で突いて反撃しました。
両者は組み合い争ううちに足を踏み外し、共に海に転落しました。
又重と悪五郎が互いの首を刀で掻き落とすと、二つの首が体を離れた後も海中で争いを続けました。
やがて悪五郎の腰に提げられていた小三太の首も躍り出て、この争いに加わりました。
夜には三人の首が噛みつき合い、火炎を吐いて争い、昼には海水が巴の様相を見せたため、この場所は巴が淵と名付けられたといいます。
『絵本百物語』の本文では上のような話となっていますが、絵につけられた詞書では、三人の博徒が勝負上の諍いから捕らえられて死罪になり、海に流された死骸の首が一箇所に集まり昼夜を問わず争うようになったと解説されています。
▽註
・『絵本百物語』…天保12年(1841)刊の怪談集。桃山人作、竹原春泉斎画。副題『桃山人夜話』。
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