■再度の怪[さいど-かい]
▽解説
一度怪異に出会った人が、驚いて逃げた先などで同じ怪異にもう一度遭遇するというもので、怪談集や各地の伝承に様々な種類のものが残されています。
柴田宵曲は『妖異博物館』の中で、これら怪異の総称として「再度の怪」という語を用いています。
小泉八雲の『怪談』にある「むじな」の話が、再度の怪の代表例として挙げられます。
ある晩、東京赤坂の紀伊国坂を通る商人がいました。
商人は坂を登る途中、濠端で蹲って泣いている女を見つけます。心配して声をかけると、女は顔を上げますが、なんとそれは目鼻口のないのっぺらぼう。
仰天した商人は慌てて逃げ出し、夜啼き蕎麦屋に駆け込みました。
事情を語ると、蕎麦屋は「その女はこんな顔ではありませんでしたか」と言って自分の顔を撫でました。その途端、蕎麦屋の顔は先程の女と同じのっぺらぼうに変わり、同時に屋台の明かりも消えてしまいました。
柴田宵曲はこのような「再度の怪」の起源を、中国の『捜神記』まで遡れるものとしています。
▽註
・『妖異博物館』…柴田宵曲著。昭和38(1963)年、青蛙房から初版発行。各種の怪異談を分類、考察したもので、続編も刊行された。
・『怪談』…小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)著。1904年刊。原題『Kwaidan』。怪談集や伝聞に取材した17編の怪談と3編のエッセーで構成された作品集。
・『捜神記』…中国東晋代(317~420)に成立した怪奇小説集。干宝の作。元来30巻あったとされるが、散逸して全20巻となる。
▽関連
・二尺の顔
・大腕
・毛脚
・朱の盤
・のっぺらぼう
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