白熊

■白熊[はくゆう]

▽解説

 『北越雪譜』に記述のあるものです。

 天保3年(1832)の春、越後魚沼郡の樵が八海山で真っ白な小熊を捕らえました。
 珍しいものなので生け捕りにして飼っておいたところ、香具師がこれを買い求め、市場や祭礼の場で見世物にしたといいます。
 大きさは犬ほどで、その体毛は雪と見紛うばかりに白く光沢があり、目と爪は天鵞絨のように赤く、人によく慣れていたといいます。

 『北越雪譜』の著者である鈴木牧之は、白亀の改元、白鳥の真瑞、八幡の鳩、源家の旗を例に挙げ、白いものは皇国の祥象であり、この白熊もまた昇平万歳の吉瑞だとしています。


▽註

・『北越雪譜』…鈴木牧之著。天保8年(1837)刊。雪国越後の自然や習俗、奇事などについて記述。




 『北越雪譜』では「しろくま」「はくゆう」と2通りの読み方をしています。
 戦後にも越後で白いツキノワグマが発見されることは何度かあったようで、この神聖な獣を狩るべきか否か、ってことで発見後数年間も議論がなされた、なんてこともあったそうです。