白沢

■白沢[はくたく]

▽解説

 中国に伝わる霊獣で、白澤とも表記します。
 『山海経』には、白沢は東望山にいる獣で、人語を解し、王者が有徳であれば出現すると記されています。
 『黄帝内伝』『軒轅記』には、中国古代伝説の帝王である黄帝が白沢に出会ったとあります。黄帝が巡幸し、東の海辺に至って桓山という山に登ったとき、神獣白沢に遭遇したといいます。
 白沢は人間の言葉を話し、森羅万象に通暁していました。白沢によれば、精気が凝って物の形をなしたり、遊魂が変化して生じた妖怪の類はおよそ一万一千五百二十種程もあるといいます。黄帝は白沢の語った内容に基づいて図を描き天下に示すことを命じ、その結果『白沢図』という書籍が出来上がったといいます。
 『白沢図』全文は現存していませんが、唐代の『隋書』「経籍」や北宋代の『新唐書』「芸文志」には、この書の実在が記録されており、唐代の『法宛珠林』に翡翠と黄金の精について記された部分が引用されているほか、諸々の書物に佚文らしきものが残されています。
 また『捜神記』には、呉の諸葛恪が出会った妖怪の正体を『白沢図』の記述によって見極めた話が収められており、これも白沢図にまつわる逸話としてよく知られています。

 日本においては『和漢三才図会』で紹介されているほか、鳥山石燕も『今昔百鬼拾遺』の最後を飾る妖怪として白沢を描いています。
 中国では獅子や狛犬にも似た姿で描かれることが多いのに対し、日本では頭と胴に角を生やし、顔と両脇腹に三つずつ、計九つの目を持った異形の人面獣の姿が定着していました。あるいは姿の類似した獏と混同されることもあったようです。
 邪気や悪病を祓い、福を齎す力があると考えられ、江戸時代には縁起物、お守りとして白沢の絵や像が量産されました。
 

▽註

 ・『山海経』…中国古代の地理書。最古の部分は紀元前3~5世紀に成立。各地の山川に産する奇怪な動植物や鬼神に関する記述が多数ある。
・『捜神記』…中国東晋代(317~420)に成立した怪奇小説集。干宝の作。元来30巻あったとされるが、散逸して全20巻となる。
・『和漢三才図会』…江戸時代中期の絵入り百科全書。寺島良庵の作。全105巻。 
・『今昔百鬼拾遺』…鳥山石燕の妖怪画集第3作。安永10年(1781)刊行。

 

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