船幽霊

 ■船幽霊[ふなゆうれい]

 ▽解説

  全国各地でいう水辺の妖怪で、水難で死んだ者の霊が生きている者を仲間に引き入れようとするものです。
 ほとんどが海に出現するものとされますが、海のない地域では河川湖沼に現れると伝えられていることもあります。

  船に乗って集団で現れるもの、船のみが現れるもの、亡霊だけが現れるもの、怪しい光や音を発するものなど多様なパターンがあります。
  土地ごとに様々な名で伝えられ、いくつかの特徴がありますが、多くの場合は柄杓などの道具を用いて船を沈めるといわれています。
 時化の晩や霧がかった晩、船幽霊は航行する船の近くに現れ「柄杓を貸せ」と要求してきます。 言葉通りに貸してしまうと、たちまち柄杓で船内に水を汲み入れられ、沈没させられてしまいます。この難を逃れるために、船には底を抜いた柄杓を用意しておくものだといいます。
 船幽霊が要求するのは柄杓ではなく桶、樽、淦取とされることもあります。


▽関連

海坊主
幽霊




 地味に呼び名がいっぱいある妖怪です。「柄杓貸せ」系だけでもアカカスリカセ、アカトリカセウェー、イナダカセ、エナガクレ、クッヤッカセ、シャクシクレ、タンゴクレレ、ヨナゴカセ、などなどサマザマにあるのです。面白いです。『今昔画図続百鬼』にも『絵本百物語』にも『狂歌百物語』にも描かれていることから有名さがうかがえる感じですね。