血塊

■血塊[けっかい]

▽解説

 埼玉県、神奈川県、長野県などに伝わる妖怪です。長野県ではケッケとも呼ばれます。

 これは妊婦から産まれることがあるもので、毛むくじゃらで口や鼻が牛に似ているとされています。
 生まれ出ると縁の下に駆け込む、あるいは囲炉裏の自在鉤に登るといいます。

 埼玉県浦和では血塊が縁の下に駆け込むと産婦の命が危ないので、逃げられないようにお産のときは屏風を巡らせるといい、神奈川県足柄上郡三保村玄倉では、自在鉤を登った血塊を打ち落とすために、鉤に飯杓子を結びつけておくといいます。

 日野巌(山口県出身)は著書『動物妖怪譚』に、幼い頃に血塊の見世物を見たと記しています。
 「母の胎内に十六ヶ月いた末に手術を受けて生まれた子」と説明された「血塊」は子猫ほどの大きさで、白い体色をしていたといいます。眠っていることが多く、時々客の目の前でミルクを飲み、その際には赤白二枚の舌があると言って見せられたそうです。
 後にこの動物の正体を調べたところ、それはコンカンと呼ばれる南洋の夜猿(スローロリス)だったということです。

 
▽註

・『動物妖怪譚』…日野巌著。大正15年(1926)『趣味研究 動物妖怪譚』として初版発行。伝説上の動物を分析、解説した書。