■桂男[かつらおとこ]
▽解説
和歌山県東牟婁郡下里村では、満月でないときに月を長く見ていると桂男に誘われるといわれていました。
『絵本百物語』には人型の雲のような桂男が描かれ「月をながく見いり居れば桂おとこのまねきて命ちゞむるよし、むかしよりいひつたふ」とあります。
同書では桂男を月の中の隅であるとしています。
中国の伝承には、月には月桂殿という宮殿があり、そこに聳える五百丈(約1500メートル)もの桂の木を伐るのが桂男だとされています。
唐代の『酉陽雑俎』によれば桂男は西河出身で、姓は呉、名は剛といい、仙法を学んだ罪によって罰せられ、月の桂を伐らされているそうです。
このような中国の伝承が日本に伝わり、妖怪桂男が生まれたと考えられます。
▽註
・『絵本百物語』…天保12年(1841)刊の怪談集。桃山人作、竹原春泉斎画。副題『桃山人夜話』。
月の隅の妖怪といいながら『絵本百物語』でも水木しげるのイラストでも、隅というより雲っぽいです。
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