肉吸い

■肉吸い[にくす-]

▽解説

 三重県熊野市や和歌山県の果無山などに伝わる妖怪です。

 肉吸いは十八、十九歳くらいの美女に化けて現れ、ホーホーと笑いながら人に近付き、「火を貸してくれ」と言います。
 このとき提灯を貸すと火を消され、暗くなったところを襲われて肉を吸い取られてしまいます。
 そのため、夜の山に入るものは火縄を携えて火種を絶やさなかったといいます。

 十津川ではある猟師が山中で化け物に出会い、南無阿弥陀仏と彫り付けた鉄砲玉を打ち込んで退治したことがあり、その化け物の体は骨と皮ばかりで肉がありませんでした。これが肉吸いの正体であったということです。


 『百鬼夜講化物語』『夷歌百鬼夜狂』にも「肉吸」と名付けられた妖怪がありますが、こちらは男が腎虚になり精を枯らしてしまうほどの美女を妖怪に擬したものです。