幽霊

■幽霊[ゆうれい]

▽解説

 死んだ者の霊魂が生前の姿をとって現れ出たものです。
 未練や遺恨のある者の霊魂は幽霊として現世をさまよい、生者に、特に生前関わりのあった者に何らかの働きかけをしてくるものと考えられてきました。

 日本では典型的な幽霊の外見イメージとして、額に三角の布(天冠、額烏帽子などと呼ばれるもの)をつけ、死装束の白帷子を纏い、両手はだらりと力なく垂らし、足元は朦朧としている、あるいは窄まっているという姿が想像されます。これは芝居などによって定着していったものといわれています。
 日本画、浮世絵の世界でも幽霊画は一分野といえるほど、様々な絵師により多数の作品が作られています。上記のような死装束の印象を重視したもの、人の姿をとらないもの、血や生首などの凄惨な表現を用いたもの、髑髏や鬼火を配置するもの、幽霊の顔つきにどこか滑稽さを感じるものなど、作風も多岐に渡ります。

 幽霊と妖怪の区別については、柳田國男が「妖怪談義」(昭和11年、『妖怪談義』所収)に記したものが広く知られています。
 この中で柳田は妖怪(オバケ)と幽霊の間に「かなり明瞭な差別」があるとして、出現する時刻、相手、場所に違いがあると説明しています。
 両者を区別することは、その論の目的が何であるかにもより、一概に意義や是非を決めることはできません。ただ、いずれにしても妖怪と幽霊の境界線は曖昧であり、峻別は困難であると考えられます。


▽関連

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 元記事投稿:2009年9月6日
 加筆修正:2014年11月1日